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展示会で足を止めさせる動画の作り方 — 音が出せない会場で何を見せるか

展示会の動画は、音が出せない・誰も最初から見ない・数秒で通り過ぎられる、という前提で作らないと使いものになりません。答えは2つに絞られます。音なしで「何をしている会社か」が一目で分かる映像にするか、「続きが気になる」物語にして人を立ち止まらせるか。VINEPROはこの正反対の解を両方作ってきました。サスティナブルEXPOでエンドレス上映されたSTXの工場PR動画と、ディストリビューター向けコンベンションで上映されたPLUS株式会社のドラマ仕立て広告です。この2本を軸に、展示会用動画の設計の考え方を書きます。

Webの動画と違う条件は3つ

  • 音がない:出せても隣のブースの呼び込みとBGMにかき消される。ナレーションで説明する構成は成立しない
  • どこから見られても成立する必要がある:1日中ループしているので、起承転結を頭から見てもらえない
  • 勝負は数秒:来場者は歩きながら横目で見て、興味がなければ数秒で視線を外す

Web用の会社紹介動画をそのまま流すと、冒頭のロゴと社屋の全景が誰にも見られないまま回り続けます。この条件に、STXとPLUSではまったく違う答えを出しました。

解その1:STX型。工程の「画」だけで語り、ループで回す

STXの案件は、サスティナブルEXPOのブースでのエンドレス上映が主用途でした。設計の起点は「音がなくても製造工程と品質が伝わること」。ナレーションは使わず、テロップと画だけで進行させました。

画作りの軸は、製造工程のディテールからドローンの全景までの振り幅です。製造工程の手元の寄りは、通り過ぎる人の目に引っかかります。そこからドローンの俯瞰に抜けると規模感が一発で伝わる。「ちゃんとした工場で丁寧に作っている」と説明なしで分かる映像を、言葉の代わりに置いていく作り方です。

STX工場PR動画より、縫製の手元の寄りとドローンの俯瞰
STX工場PR動画より。手元の寄り(左)とドローンの俯瞰(右)。この振り幅で丁寧さと規模を伝える

ループ設計も重要でした。どこから見始めても「工程を見ている」と分かる構成にし、終わりと始まりを自然につなぐ。展示会ではこれが「冒頭で足を止める」ことと同じくらい効きます。さらにこの案件では、映像に登場したトレンチコートの実物をブースに並べていただきました。画面の中で作られているものが目の前にある。動画と現物が互いを説明し合うので、説明員が話し始める前に会話の入り口ができます。クライアントからは「じっくり見入っているお客様が多く見られた」という声をいただきました。

STX工場PR動画に登場したトレンチコート
映像に登場したトレンチコート。展示会ではこの実物を上映画面の横に並べた

STX 工場PR動画(サスティナブルEXPOでエンドレス上映)

撮影面で難しいのは、工場は操業を止められないことです。ラインを止めれば損失が出るので、稼働の合間を縫って作業の邪魔をせずに撮る段取りが要ります。ドローンは別途飛行許可が要り、「実務では許可なしで回っている」企業PRの撮影とは事情が違います(撮影許可ガイド)。KAWAJUNの工場ドローン撮影でも、飛行許可の取得から安全運用までを自社で行いました。

解その2:PLUS型。ドラマ仕立てで「続き」を見させる

PLUS株式会社の案件は、ディストリビューターが集まるコンベンションでの上映でした。製品カットとテロップの積み上げではなく、脚本のあるドラマ仕立てにしたところ、参加者が食い入るように画面を見ていました。この手の上映は流し見されるのが普通なので、これは珍しい反応です。

PLUSのドラマ仕立て広告より3場面
PLUSのドラマ仕立て広告より。書類の山に追われる主人公の物語の中で、製品が自然に登場する

PLUS株式会社 ドラマ仕立て広告(ディストリビューター向けコンベンションで上映)

ドラマ型を選べたのは、会場の条件があったからです。通路を歩く不特定多数ではなく、ディストリビューターという決まった観客が着席し、最後まで見る前提がある。STXのブースと同じ条件なら、物語は途中から見ても意味が取れないので選びません。着席の会場では逆に、「続きを知りたい」という物語の引力がそのまま使えます。スペックの羅列は覚えられませんが物語は覚えていて人に話せるので、上映後は「あの動画の話」から商談が始まります。ディストリビューター経由で売る商材では、この「語れること」が上映中の視線より大きな価値です。

ただし、ドラマ仕立ては工程が増えます。脚本、キャスティング、演出、美術。企業PRのために一から立ち上げると、費用も時間も跳ね上がります。VINEPROが受けられるのは、自社のショートドラマレーベルVINEPRO PANDA FILMで「ホビロン」110万再生、「2つのお年玉」100万再生といった作品を作り続けていて、その工程がそのまま社内にあるからです(ショートドラマ制作の解説)。役者も定期開催のオーディションで確保しており、直近では200名の応募から演技審査まで行いました(役者オーディションの記事)。

どちらを選ぶか。判断の軸は「観客」と「ブースの役割」

STX型とPLUS型は優劣ではなく、条件で決まります。STXは通路に面したブースで来場者は歩いていて、横に実物のトレンチコートがある。だから工程を見せてループで回しました。PLUSは着席した決まった観客で、売り物はディストリビューターが「語れること」。だから物語にしました。

  • 観客が不特定多数で、通路を歩いている:STX型。どこから見ても成立する工程・実物の映像が強い
  • 観客が着席していて、最後まで見る前提がある:PLUS型。物語の引力がそのまま使える
  • ブースに実物がある:STX型と相性がいい。動画は「実物の作られ方」を見せる役に回す
  • 売り物が目に見えないサービスや仕組み:PLUS型。使う場面を人物で見せるしかない

音が出せない会場向けのチェック4項目

新規制作でも既存動画の転用でも、VINEPROが実際に確認している項目です。

  1. 音を消して見て、内容が分かるか。STXはここを起点に置き、ナレーションを最初から設計に入れませんでした
  2. 手元の寄りと全景の両方があるか。寄りが目を引き、全景が規模を伝える。STXは工程のディテールとドローン全景の振り幅で組みました
  3. 終わりと始まりがつながっているか。黒味やエンドロールが挟まると、そこで視線が外れます。STXはループ前提で組みました
  4. ブースの実物・説明員の話とつながっているか。STXはトレンチコートの実物、PLUSは上映後の商談。動画単体で完結させず、その場の会話の入り口として設計します

ベトナムで撮る場合に知っておくこと

工場の撮影は、日本でもベトナムでも段取りがすべてです。ただしベトナムには特有の事情があります。ベトナム人は基本的に真面目で、他の国と比べれば勤勉ですが、スケジュール管理が苦手で、日本と比べると驚くほど計画性がない場面に出会います。優劣ではなく違いですが、操業を止めずに撮る段取りでは、この違いをこちらが吸収する必要があります。決めた時間に決めたラインが動いている前提で組まない。当日の稼働を見て撮る順番を組み替えられるよう、カットリストを工程単位で持っておく。VINEPROは日本人ディレクター・カメラマン・編集者が常駐し、ベトナム人クルーと混合チームで動くので、日本側の「当たり前」と現地の進み方の間に立てます(現地の制作会社の弱み)。

一方でベトナムはロケ地交渉が柔軟で、ロケ地とキャストのコストを日本比で大きく抑えられます。Alliexの広告では、ホーチミンのモダンなカフェを2日間丸ごと貸し切り、オーディション選抜のキャスト13名で撮影しました。PLUS型を選ぶなら、この差がそのまま予算に効きます。

費用と相談の仕方

既存素材の再編集で済む場合と、工場撮影やドラマ撮影から起こす場合で大きく変わります。VINEPROの入口の目安は編集5万円〜、制作25万円〜で、そこから撮影日数・ドローンの有無・キャスト数で変動します(費用ガイド)。日本法人があるので、国内での契約と支払いも可能です。

相談の際は「どの展示会で、どのブースで、音が出せるか、観客は歩いているか座っているか」を教えてください。この4点が分かれば、STX型かPLUS型か、その中間かを提案できます。開催日から逆算すると撮影と編集にかけられる時間は思ったより短いので、案件に応じて早めにご相談ください。

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