ベトナムでの撮影に許可は必要? 建前と実務のギャップを現地制作会社が解説

「ベトナムでの撮影に許可は必要ですか?」——よくいただくご質問ですが、正直にお答えすると、これは一言では答えられない質問です。
制度の上では、映画や報道の撮影には当局への許可・申請の仕組みが定められています。一方で、企業のPR動画やSNS動画といった通常の商業撮影には、そもそも一般的な「撮影許可制度」自体が存在しません。だから実務では許可なしで日常的に撮影されている——この「建前と実務」の構図と、そのあいだにあるグレーゾーンが、ベトナム撮影で一番わかりにくいところです。
VINEPROは「有吉の世界同時中継」「マツコ会議」「Focus 斎藤佑樹 ひとり旅」などの現地撮影を担当してきました。この記事では、その実務経験をもとに「どう考えればいいか」を整理します。
「建前」と「実務」の構図を理解する
- 許可が制度化されている領域 — 劇映画・ドキュメンタリーなどの「映画」を外国の組織がベトナムでロケ撮影する場合は当局の許可が、外国メディアの報道・取材には外務省への事前申請が、それぞれ定められています(報道の制度は2026年に新しくなりました)
- 制度の対象外の領域 — 企業のPR動画・SNS動画・街中の小規模なロケには、一般的な撮影許可の制度がそもそもありません。「黙認されている」のではなく、対象外だから許可なしで撮れる、が正確な整理です
- ただしグレーゾーンがある — 「ドキュメンタリー風のブランドムービーは映画に当たるのか」「取材風のコンテンツは報道に当たるのか」といった線引きは曖昧で、場所・内容・規模、さらには時期(国家的イベントの前後など)によっても現場の運用が変わりえます
このグレーゾーンは、条文を読めば解決するものではありません。日々現地で撮影している者の肌感覚——「この場所・この規模・この内容なら通常どう扱われるか」——で判断していく世界です。
※撮影・ドローン関連の制度は2025〜2026年にかけて大きく更新されています。実際の案件では、その時点の最新の運用を確認しながら進めます。
こういう撮影は特に注意
グレーゾーンの中でも、次のケースは扱いがはっきりしている、あるいはトラブルになりやすい領域です。
- 施設内の撮影 — 工場・商業施設・ホテルは施設側の許可が必要です。条件付きになることも多く、ALSOKベトナム様のCMではイオンモール様の全面協力を得つつ「テナント名が映らない画角」という条件で撮影しました
- ドローン空撮 — これは明確に許可の世界です(次の章で詳しく)
- 政府・軍関連エリアの周辺 — 撮影がトラブルになりうるセンシティブな場所があります。事前に避ける・確認するのが鉄則です
- 報道・番組系のロケ — 内容によっては、ベトナム外務省など当局への事前申請が必要になるケースがあります。こうした手続きは、案件の内容・規模に応じてご相談ください
- 目立つ規模の撮影 — 大きな機材やクルーを展開する撮影は、それだけ声をかけられる可能性も上がります。段取りと現地対応力が問われる場面です
- 人物の撮影 — 出演者の同意と、市場や街頭で映り込む方への配慮は万国共通です
ドローン空撮だけは特別
ドローンだけは話が別で、飛行許可が明確に制度化されています。しかも2025〜2026年に制度が全面的に新しくなり、機体の登録が義務化され、飛行許可は国防省系の所管に(ごく小型の趣味用途など一部の免除はあります)。軍事関連区域や空港の周辺など飛行できないエリアも多く、申請には時間がかかります。「現地に着いてから飛ばせないことが判明」は本当によくある失敗なので、工場・不動産・リゾートの空撮をお考えなら納期から逆算して早めにご相談ください。
成否を分けるのは「段取り」
許可の話と同じくらい——実際にはそれ以上に——撮影の成否を分けるのが現地の段取りです。特に日本と結ぶ生中継・リモート収録では次の3つが生命線になります。
- 回線の事前テスト — 中継場所の回線を事前に確認し、モバイル回線のバックアップを必ず用意する
- 信号を現地で完結させる — スイッチングと音声ミックスを現地側で済ませ、日本には「完成された1系統」だけを送ると事故が減ります(マツコ会議の機材構成で詳しく解説)
- 時差と進行表 — 日本のスタジオ進行に合わせて現地を動かす段取り力
ロケハンで見るべきもの
- 光 — 時間帯による日の入り方。屋外は雨季のスコール対策と予備日の設計も
- 環境音 — バイクの走行音・市場の喧騒はベトナム名物。録音プランに直結します
- 背景と画角 — 映ってはいけないもの(施設名・通行人・広告)の確認
- 電源と搬入経路 — 照明を使う撮影では死活問題です
よくある失敗
- 施設の「口頭OK」だけで当日に止められる → 書面・担当者名まで詰めておく
- ドローンの許可が間に合わない → 空撮は最初に相談する
- 機材の持ち込みトラブル → 現地レンタル・現地機材の活用も選択肢
- 「危ないから」で撮影位置を直前変更 → 野球の撮影でバックネット裏を断念した実例のように、安全とのトレードオフは現地で即断します
現地チームに任せるという選択

ここまで読んでいただいたとおり、ベトナム撮影の難しさは「許可のルールが厳しい」ことではなく、線引きが曖昧で、経験がないと判断できないことにあります。この曖昧さを日々の撮影経験でさばくのが、現地チームの価値です。
VINEPROは日本人のカメラマン・編集者もベトナムに常駐しており、ロケハン・施設交渉・キャスティング・撮影・編集まで現地で一貫対応しています。テレビ番組のコーディネート会社様との協業実績も多数あります。ベトナムでの撮影をご計画中なら、企画段階からお気軽にご相談ください。費用の考え方は費用・相場ガイドにまとめています。
